しかし、何と言っても時代も変わった。科学技術も進歩したし、理科教育に関する書物も溢れんばかりに増えた。
そう考えると、『ロウソクの科学』も新しい使命を持つべき時が来たのではないか。その使命とは、科学の世界が生んだ最大の講演者、特に少年少女を含めた市民に対する講演者としてのファラデーの偉大さを改めて学び、今後の理科教育の生きた教材として活かすことである。科学の知識のソースとしてではなく、科学的精神とは何かを少年少女に伝える材料としてである。
『ロウソクの科学』 ファラデー 岩波文庫
時代は変わったといっても、「なんでロウソクはゆっくり燃えるんですか?」とか聞かれるとうまく答えられない人は沢山いると思う。少なくとも私には無理だった。
ロウソクの側面に一様に働いて外側を冷やしている、驚くほど規則的な上昇気流によってお椀がつくられるのです。このようなお椀をつくる性質のない燃料は、ロウソクには使えません。
『ロウソクの科学』 ファラデー 岩波文庫
当時は気体を、塩素のように液化できるものと、酸素、水素などのように液化しない「永久気体」に大別していた。
『ロウソクの科学』 ファラデー 岩波文庫
たくさん訳注をつけてくれてあるので当時のことが分かりやすい。そして、分かりづらい実験についてもこの時代のテクノロジーのおかげで動画が探せば見つかるから理解しやすい。
徒弟の身で、製本のために送られた本を読んだり、時には実験を試みることができたのは、リボーが真面目で向学心に富むファラデーをかわいがったからに違いない。
『ロウソクの科学』 ファラデー 岩波文庫
ファラデーの生涯もなかなか興味深い。
一八三九年の末ころから、彼の健康は急速に衰えていった。一説によると、水銀中毒のためである。彼は電気回路の接点に水銀を常用していたが、水銀の一部が床にこぼれ、絶えず蒸気を発生して可能性がある。当時は薬品の害も今ほど知られておらず、また、しかるべき注意も払われていなかった。既に述べたが、彼の師デイヴィーが早世したのも、若い頃行ったフッ素単離の実験でフッ素を吸引したためであるともいわれる。ブンゼンは爆発物を扱っていて指を失ったし、キュリー夫人は放射能に侵されて苦しんだ。
『ロウソクの科学』 ファラデー 岩波文庫

ちなみにこの本もKindle Unlimitedに加入していれば無料で読める。
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